「Design」と「デザイン」について:大阪芸術大学での特別講義レポート

2025年12月13日、大阪芸術大学のデザインプロデュースコースにて、「Design と デザイン」というテーマで特別講義を行いました。
「デザイン」という言葉は、現代において非常に広義に使われています。しかし、その本質を理解するためには、語源的な意味での「Design」と、一般的に想起される造形としての「デザイン」を分けて考える必要があります。
将来のクリエイターを目指す学生たちに向けて、私自身のキャリアと研究活動を交えながら語った内容をダイジェストでお届けします。
1. キャリアの軌跡:実務と理論の往復
講義の冒頭では、私のこれまでの歩みを紹介しました。
名古屋市立大学および大学院でデザインを学んだ後、デザイン事務所であるOUZAKでの実務経験、そして株式会社キーエンスのデザイングループでのインダストリアルデザインやUIガイドライン策定といった経験を経て、Balloon Inc.の創業に至りました。
グラフィック、プロダクト、UI/UXといった異なる領域を横断してきた私のキャリアの根底には、常に「造形(かたち)」と「意味(役割)」をいかに一致させるかという問いがありました。

2. 「Design」と「デザイン」の境界線
本講義の核心は、「Design(大文字のD)」と「デザイン(小文字のd)」の比較にあります。
Design(計画・設計):目的を達成するための計画、問題解決のプロセス、構造の設計。
デザイン(造形・装飾):色や形、表面的な美しさ、スタイリング。
日本において「デザイン」という言葉は、後者の「見た目を整えること」として捉えられるケースが多いのが現状です。しかし、本来のDesignとは、何のためにそれを作るのかという「意味」を定義することから始まります。こうしたスタンスは、プロヂュースデザインコースのみなさんが目指す姿と似ているのではないでしょうか。
デザインの領域の広がりについて言及された、リチャード・ブキャナンの捉え方を図示すると以下のようになります。デザインの領域は徐々に広がり、より多岐にわたる視点やスキルが求められています。

こうしたデザイナーに対する要求の変化は、デザイン対象によるものだけでもありません。例えばデザインスタジオと上場企業のデザイン部では、求められる役割や業務の範疇は大きく変わるのが実態です。デザインに対する姿勢は変わらないまでも、それぞれの立場において適切なふるまいや必要なスキルは大きく異なります。
ここではOUZAK Designと、キーエンスそれぞれにおける組織体制とプロジェクトに対する関わり方を比較しながらお話ししました。以下はデザインスタジオ OUZAK Design における組織体制や業務内容を大まかにまとめたものです。
一方、キーエンスのような規模感の組織内のデザイン部では、以下のように図示できると思います。特に大規模な組織においては業務の効率化と分業化が進んでおり、デザイン部はデザインのみに集中できる環境が整っていると言えます。
3. 製品意味論:モノに宿る「意味の構造」
講義の後半では、私の研究テーマでもある「製品意味論(Product Semantics)」についても少し触れました。これは、製品の形態がいかにしてユーザーにその機能や価値を伝えるか、という記号論的なアプローチです。
例えば、ある製品のスイッチが「押せる」と直感的にわかるのは、その形が「押しやすさ」という記号を内包しているからです。デザイナーの仕事とは、企業の想いや製品の機能を、ユーザーが正しく受け取れる「記号」へと翻訳することに他なりません。
参考:情報の翻訳プロセスについて
専門的な知見をいかに「届く形」に翻訳するかについては、【専門知を伝えるデザインの論理|奈文研講演レポート】でも詳しく解説しています。
おわりに:次世代のプロデューサーたちへ
デザインプロデュースコースの学生産たちは、将来、クリエイティブとビジネスの架け橋となる存在になるのだと思います。
単に「綺麗なもの」を作るスキルだけでなく、その背後にある「Design(設計)」の意図を言語化し、構造を最適化できる能力が求められます。今回の講義が、みなさんにとって自らの「デザイン」をより高い視座から見つめ直すきっかけになれば幸いです。
デザインの初学者やノンデザイナー、専門家の方々へ向けてデザインの基礎を習得できるセミナーも行っています。情報の優先順位の付け方から、論理的なレイアウト、書体選択、図解による可視化まで、誰にでも習得可能な「デザインの論理」を体系的に学んでいただけます。
【デザインのじくあしセミナー】
▶︎https://lloon.jp/basic_seminar/
執筆者プロフィール:志水 良(Shimizu Ryo)
Balloon Inc. CEO / アートディレクター
OUZAK Design、キーエンスでのデザイン経験を経て、現在はブランディング、UI/UX、工業デザイン、グラフィックデザインまで幅広くカバー。JAGDA・JIDA正会員、German Design Award、A’ Design Award、Graphis Brandingなどを受賞。TEDx Kyotoへの参画など、デザインを通じた社会実装を推進している 。
・Balloon Inc. 公式サイト: lloon.jp







