経営戦略としてのデザイン領域:4つの層と「英雄の旅」で紐解くブランディング

経営戦略としてのデザイン領域:4つの次層と「英雄の旅」で紐解くブランディング

2024年8月2日、大阪で開催された、メビックで開催された「パッケージ展2024」にて、「ブランディングの重要性とデザイナーとの協働について」というテーマで登壇しました。

多くの企業がブランディングに取り組む中で、デザインを単なる「表面的な装飾」と捉えてしまうケースが少なくありません。しかし、現代のデザインはその領域を劇的に拡大させています。

今回の講演では、リチャード・ブキャナンのフレームワークや、神話学者ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」の構造を引用しながら、企業の物語を紡ぎ、経営資産へと昇華するためのデザインについてお話しました。

1. デザイン領域の拡大:記号からシステム、そして環境へ

まず、私たちが携わっている「デザイン」という仕事が、現在どのような領域を射程にているのかを再確認していきます。リチャード・ブキャナンが提唱した「デザインの4つの次層(Four Orders of Design)」を参考にすると、

・第1層:グラフィック(記号・シンボル・印刷物)
・第2層:プロダクト(製品・物理的なモノ)
・第3層:インタラクション(インターフェース・体験)
・第4層:システム・環境(サービス・組織・教育・社会)

経営戦略としてのデザイン領域:4つの次層と「英雄の旅」で紐解くブランディング

デザインの役割は、第1・第2次層といった「具体的・可視的」なものから、第3・第4次層のような「抽象的・不可視的」なものへと拡大しています。

ロゴやパッケージといった「点」のデザインだけではなく、それらが複雑に絡み合う「体験」や「システム」全体を一貫した思想で統合すること。それこそが、現代におけるブランディングの本質だと考えます。

2. ブランディングの核心:意図と認識のギャップを埋める

ブランディングとは端的に言えば、企業が届けたい「意図」と、顧客が受け取る「認識」のズレを最小化する作業です。

企業側がどんなに「誠実で革新的だ」と主張しても、顧客が「古臭くて不親切だ」と感じてしまえば、それがその企業のブランドの正体となってしまいます。

デザインの役割は、このギャップを埋めるための精密な翻訳にあります。色、形、書体、そしてパッケージの質感一つひとつが、企業の思想を正しく伝えるための非言語的なメッセージとして機能します。

経営戦略としてのデザイン領域:4つの次層と「英雄の旅」で紐解くブランディング

3. デザイナーとの協働:具体と抽象を往復するプロセス

デザインを経営の武器にするためには、デザイナーとの適切な「協働」が不可欠です。Balloon Inc.では、以下のようなプロセスを通じて、経営戦略を具体的な造形、デザインへと落とし込んでいます。

✔️ コンセプト・ビジョンの策定(なぜ作るのか)
✔️ デザインクライテリアの策定(判断基準の言語化)
✔️ プロトタイプとスクリーニング(具体と抽象の往復)


特に重要なのは、具体と抽象を何度も往復することです。経営層の抽象的な想いを一度バラバラに分解し、キーワードとして抽出し、それを造形や書体といった具体的な要素として再構築する。こうした翻訳プロセスこそが、強固なブランドを生み出すための重要なプロセスです。

経営戦略としてのデザイン領域:4つの次層と「英雄の旅」で紐解くブランディング

4. 物語を宿すデザイン:英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)の応用

こうした具体と抽象のコントロールについて、参考に今回触れたのが、ジョーゼフ・キャンベルが提唱した「英雄の旅(The Hero with a Thousand Faces)」という神話の構造についてです。キャンベルは、世界中の神話や物語を収集し、その中から共通して見出せる構造、すなわち「主人公の旅立ち、試練と帰還」という普遍的な物語の型を発見しました。

文化や言語を超えて、共通する項目を見出し構造化するというプロセスは、今回お話しした内容に非常に近い側面を持っていると言えまます。

パッケージを単に中身を保護する箱として捉えるのではなく、顧客を新しい体験へと誘う(ブランド)ストーリーの一部として設計し、より強固な関係を築くための礎として活用することが重要です。

経営戦略としてのデザイン領域:4つの次層と「英雄の旅」で紐解くブランディング

おわりに:ブランディングにおける共創

ブランドは、デザイナーが一人で作るものでも、企業が一方的に押し付けるものでもありません。企業の持つ想いと、デザイナーの論理的な設計、そして顧客の体験が三位一体となって初めて完成するものです。

Balloon Inc.は、リサーチから戦略策定、そして具体的なプロダクトやシステムの実装まで、デザインの全領域をカバーするパートナーとして、貴社の物語を形にするお手伝いをします。

本記事で触れたテーマをさらに詳しく、あるいは別の視点から深掘りした記事をピックアップしました。

✔️ 資産としてのブランドを設計する:ブランド定義の類型化とエクイティ構築の構造
今回の「デザイン領域の拡大」を、より経営資産(エクイティ)の観点から深掘りした記事です。

✔️ デザインの解像度を一段上げるAIとの距離感
第3・第4層(システムやインタラクション)のデザインにおいて、最新のAIをどう「補助線」として活用しているか。

ブランドが持つ潜在能力を最大限に引き出し、持続的な成長へと導くための全体のプロセスや事例をまとめた「ブランド戦略について」ページについてもあわせてご覧ください。


執筆者プロフィール:志水 良(Shimizu Ryo)

Balloon Inc. CEO / アートディレクター
OUZAK Design、キーエンスでのデザイン経験を経て、現在はブランディング、UI/UX、工業デザイン、グラフィックデザインまで幅広くカバー。JAGDA・JIDA正会員、German Design Award、A’ Design Award、Graphis Brandingなどを受賞。TEDx Kyotoへの参画など、デザインを通じた社会実装を推進している 。
・Balloon Inc. 公式サイト: lloon.jp