バルトパビリオンのコミュニケーションを誘発するデザイン


正方形をモチーフとした
シンプルなシンボルマークのデザイン
大阪・関西万博では中規模「タイプB」パビリオンが非常に面白いです。サイズ感もほどよく、各国のスタッフの方とのコミュニケーションが前提として設計されているものが多い点が個人的に素晴らしいと思います。
今回取りあげるのは、共同で「バルトパビリオン」として出展していた🇱🇻ラトビア共和国と🇱🇹リトアニア共和国です。デザインコンセプトは「WE ARE ONE」。この言葉には、自然・人類・技術が融合し、協力し合うことでより良い未来を目指すというメッセージが込められているとのこと。
展示室内や正面外のファサードには500mm角ほどの正方形ブロックがグリッド状に配置されており、内外にわたって統一感のあるデザインが展開されています。均一なサイズのブロックを組み合わせることで多様な展示や空間表現を実現している点が印象的です。
エントランスのサインはこのようなデザイン。幾何学的なサンセリフ体で組まれています。コンセプトだけはウェイトをやや細くし、イタリックで組まれています。2国の間にある垂直ストロークの長さ(キャップハイトよりもやや長い処理)や、前後のアキの設定など参考になる文字組です。

写真だとやや歪んでいますが、シンボルマークは同じく正方形をモチーフにしたデザイン。日本語のカギ括弧「」を重ねたようなデザインで、シンプルながら印象的に仕上がっています。
このシンボルマークの正方形のデザインと、会場を構成するブロックが統一されている点も素晴らしいと思いました。

会場内のサインデザインはこのような感じです。シンボルマークと同じテイストのシンプルなラインのみのデザインで、分かりやすく好感が持てます。暗めのグリーンで統一した表記もいいですね。

シンボルの展開はウェブサイトのメニューデザインにも及びます。これらのアイコンは会場内のインタラクティブなコンテンツにも見られるものですが、こちらも最小限の要素の組み合わせによってデザインされている点が特長的です。

正方形グリッドによるディスプレイデザイン
会場内に入ると、天井まで高く積まれたブロックが目を惹きます。天井までの高さはかなり高くて4~5mくらいでしょうか、バルト地域の自然の紹介としてひとつひとつ押し花のようにアクリルに挟まれた花や葉が展示されています。 こちらも同じサイズのブロックが展開されているのですが、透明のアクリル板はすべて緩やかにカーブしており、シンプルなデザインながら、奥行きのあるクオリティの高い仕上がりになっていました。 で、この緩やかなカーブがどういった意図によるものかというのがその奥に進むと分かります。

会場内に入ると、天井まで高く積まれたブロックが目を惹きます。天井までの高さはかなり高くて4~5mくらいでしょうか、バルト地域の自然の紹介としてひとつひとつ押し花のようにアクリルに挟まれた花や葉が展示されています。 こちらも同じサイズのブロックが展開されているのですが、透明のアクリル板はすべて緩やかにカーブしており、シンプルなデザインながら、奥行きのあるクオリティの高い仕上がりになっていました。 で、この緩やかなカーブがどういった意図によるものかというのがその奥に進むと分かります。

左側に置かれた加湿器で湿度を上げ、ガラスの表面に水滴が発生するようになっています。「雨が降った日のバスの窓に絵を描くような要領で、みなさん好きな絵を描いてね」という仕掛けでした。
他の国のパビリオンではデジタルコンテンツに代表されるテクノロジーを駆使した展示が多い中、かなりアナログで原始的なデザインと言えますが、この仕掛けによって、スタッフとのコミュニケーションが自然と発生し、他では経験できない体験ができました。

大型ディスプレイによるバルト地域の紹介もあるにはあって、そちらもボックスを積み上げた壁に囲まれた特長的な空間です。一部を切り取って、花をディスプレイしているのも面白いです。

サインに出現する「バラビちゃん」とはこのパビリオンの公式マスコットの名前です。バルトの森に自生するポルチーニ茸をモチーフにしており、親しみやすさと地域の自然の豊かさを表現しています。ミャクミャクとスケールを合わせたフィギュアも置いてありました。おなかに人の顔が描かれている、どこか不気味さも感じるデザインです。

その他タッチスクリーンでメッセージを残せる「未来の壁」など、来場者参加型のインタラクティブな展示も用意されています。必ずスタッフの方が説明のために側に立ってくれるので、バルトの良さを色々と教えてもらうには良い展示だと思います。
こうした国際的な大規模イベントでは普段なかなか接点のない国の方々と直接コミュニケーションが取れる点が大きな魅力です。パビリオンの規模が適度なサイズであることも、来場者とスタッフの距離感を縮め、より深い交流を生み出している印象を受けました。
ほとんど並ぶこと無く見られるパビリオンでしたので、是非皆さんも覗いてみてください。
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