ルクセンブルクパビリオンと国名を強調するXのビジュアル

Glassdoorのブランドロゴ刷新事例

GDP世界一位の国が掲げるビジョン

ルクセンブルクはヨーロッパの西部、ベルギー、フランス、ドイツに隣接する内陸の小規模国家です。正式名称はルクセンブルク大公国といい、人口規模は約67.5万で、日本における政令指定都市よりも多いくらいですね。国土面積は2,586 km²、日本の神奈川県と同じくらいの広さです。

また1人当たりのGDPが世界で最も高く、2024年時点の一人当たりの名目GDPは129,810.32米ドルで世界1位、国際的な金融拠点としても知られています。

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ルクセンブルクパビリオンのテーマは「Doki Doki – ときめくルクセンブルク」。心臓の動きの速さや、それに伴う気持ちの高揚を表す日本語の擬態語を用いているのが特徴です。

「ルクセンブルクの持続可能性と循環型社会のビジョンを共有し、鼓動が「ドキドキ」と脈打つような体験を提供します。」とのことで、SDGsの文脈でコンセプトをまとめたようです。

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そんなルクセンブルクのパビリオンデザインはこのような外観。黒い外壁の建屋の上に、鉄骨構造にテントのような白い膜をはった形状が興味深いです。

この建築のデザインにおいても、万博閉幕後にも可能な限りパビリオン部材の再利用を目指すという目標を掲げたサーキュラー・バイ・デザイン(循環型設計)を掲げています。

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接地したパーツはサイズ感からするとかなり細い鉄骨です。なんとなく膜で出来た屋根が浮いているようにもみえる面白さがあります。

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国に関する基本情報がエントランスに掲示されているのは親切ですね、パビリオン鑑賞前に大まかな把握ができるのはありがたいです。

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3Dプリンタで台座を成型したイスも置かれていました。

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目を惹いたのは、国名の一部「LUXEMBOURG」の一部「X」をシンボルマークを兼ねたデザインとして、メインのビジュアルエレメントとして展開していた点です。頭文字では無いので、レターマークとは言えないかもしれませんが左右対称でパターンとしての強度を持つ「X」のデザインはとてもよく出来ていました。

赤と青のカラーリングで、今回の大阪・関西万博のカラーパレットと似ている印象ですが、前回のドバイ万博2020でも同様のシンボルマークを使用していたことから、これに関しては偶然のようです。

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公式Instagramのビジュアルには、「X」の一部パーツを組み合わせてハート型を想起させるデザインとして展開されています。今回のテーマ「Doki Doki」とマッチしていますね。

心臓の鼓動を表す「ドキドキ」という擬態語が、日本語を母語としない人々にどのように捉えられるかは興味深い点です。例えば、英語では同様の音を「thump, thump」と表現するようですが、その場合、海外からの来場者がこの赤と青の造形を、心臓の象徴であるハートとして直感的に理解するのはもしかしたら容易ではないかもしれません。

球体ディスプレイや没入体験など工夫の多い展示デザイン

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展示室は大きく3つのパートに分かれています。

最初はディスプレイに、同じ目線の高さになるように調整された、等身大のルクセンブルクの人々が語りかけるような仕掛けの部屋です。多様な人種や職業の人々が紹介されています。

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二つ目の部屋が、視界を埋め尽くす巨大な球体ディスプレイを中心とした空間です。来場者は手元のコンソールを操作することで、この球体ディスプレイに映し出される映像や情報にインタラクティブに干渉し、没入感あふれる演出を体験できます。

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手元のコンソールはこのようなデザインで、自分の興味のある社会課題を「ピクトグラム」で選択します。それぞれの課題にカラーが施され、選択した課題のカラーボールが、中央の大きな球体ディスプレイへ集まっていくというものです。

社会的な問題は一般的に、単一の概念で捉えにくい複雑なものが多いものです。多言語対応として文字情報を排除し、ピクトグラムに特化したデザインは意図として理解できるものの、そうした内容を直感的に理解することが難しいと感じられました。

この点が、展示への没入体験を妨げる要因となっていたように思います。そうした観点でこのユーザーインターフェースや演出については再考の余地がありそうです。

球体のサイズ感は迫力もあり、音と映像のコンテンツは見応えのあるものではありましたが、インタラクションのデザインは既存の展示を想起させるもので、目新しさに欠ける印象も受けました。

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最後の部屋はこのようなデザイン。立方体の中に入って、360度平面のディスプレイに囲まれながらルクセンブルクの自然や文化を浴びる体験展示でした。

床面を見せるためにハンモックを用いたのは結構面白いアイデアだと思いました。靴を脱いでハンモックに寝転がって鑑賞ができます。強度確保のためか縄の太さとピッチが狭く、床面の映像はやや見にくくはありましたが、それでも様々に応用が出来そうなデザインだったと思います。

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「X」のビジュアルエレメントはパターンとして、こういったサイン類にも展開されています。ファサードにも同じ赤と青のカラーリングテープが施され、ビジュアルのエレメントがパビリオン全体のクオリティをうまく支えていたように感じます。趣の異なる3つの展示は様々な世代の方々が楽しめるものだと思いました。

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