「もの」に「かたち」を与える仕事:プロダクトと体験を横断するデザインの思考プロセス

2014年3月22日、Apple心斎橋にて公開講演を行いました。テーマは「もの」に「かたち」を与える仕事についてです。
デザイナーが新しい何かを生み出すとき、その「かたち」は単なる表面的な装飾ではありません。それは、ユーザーがどのような体験(こと)をするのか、そしてそのプロダクト(もの)が社会の中でどのような役割を果たすのかという、洞察から導き出される必然の結果です。
本講演では、具体的なプロジェクトを例に挙げながら、Balloon Inc.が実践しているクリエイションのプロセスと、デザイナーにとっての道具としてのMacの存在意義について共有しました。
まず前半でお話ししたのは、「モノのデザイン」と「コトのデザイン」の融合についてです。具体例として、社会人向けのオンライン学習プラットフォーム「ShareWis」でのUI(ユーザーインターフェース)デザイン・ディレクションの事例を紹介しました。
デジタルなプロダクトにおいて、画面上のボタンやアイコンは「もの」としての視覚要素ですが、それらがユーザーにどのような学習体験(こと)をもたらすかが本質です。学習の進捗を地図のように可視化し、知識の繋がりを直感的に把握できるインターフェースをデザインしました。
そこには、単なる「使いやすさ」を超えて、学ぶことの楽しさや継続性をいかにデザインするかという、体験の設計(コトのデザイン)が設計されています。
2. 多様なクリエイション:あるべきデザイナーの姿
講演の後半では、これまで手がけてきた多様なデザイン作品を紹介しながら、モノとコトを横断するデザイナーの役割について掘り下げました。
工業デザインからグラフィック、UI/UXまで、Balloon Inc.の活動領域を広範囲に設定してるのは、対象が物理的な製品であってもデジタルなサービスであっても、本質的に「かたち」を与えるプロセスは共通していると考えるからです。
✔️ 対象の本質を観察し、言葉にならない課題を見つけること
✔️ 論理的な思考によって、最適な解決策としての「かたち」を導き出すこと
✔️ その「かたち」によって、ヒトとモノの新しい関係性を構築すること
あるべきデザイナーの姿とは、単に造形だけを行う技能者ではなく、価値を翻訳し、未来の体験を具体化するナビゲーターでもあると考えています。
3. 道具としてのMac:クリエイションを加速させる相棒
Apple心斎橋での講演ということで、デザイナーにとってのMacの存在についても触れました。
デザイナーにとって、Macは単なるコンピュータではなく、思考を止めることなくアウトプットへ繋げるための「手の延長」のような存在です。直感的な操作性と、高い審美性を持つインターフェースの融合がもたらす道具自体が優れたデザイン性は、クリエイターの感性を刺激し、高い品質のクリエイションを生み出すための重要な環境の一部だと思います。
おわりに:10年経っても変わらない「かたちの意味」
この講演から10年以上が経過しました。当時お話ししたデジタルサービスの設計思想は、現在のAI活用や複雑なブランド戦略の構築においても、その根底で繋がり続けています。
テクノロジーが進化し、デザインの対象がどれほど広がっても、私たちが「もの」に「かたち」を与えるとき、そこには常に「人の体験を豊かにしたい」という変わらぬ願いがあります。
Balloon Inc.はこれからも、論理と感性を高次元で融合させ、時代を超えて価値を持ち続ける「かたち」を追求していきます。
関連記事:デザインの普遍性と進化
2014年の講演で語られた「モノとコト」の視点は、現在のプロジェクトへも繋がっています。ぜひ、その後の進化も併せてご覧ください。
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執筆者プロフィール:志水 良(Shimizu Ryo)
Balloon Inc. CEO / アートディレクター
OUZAK Design、キーエンスでのデザイン経験を経て、現在はブランディング、UI/UX、工業デザイン、グラフィックデザインまで幅広くカバー。JAGDA・JIDA正会員、German Design Award、A’ Design Award、Graphis Brandingなどを受賞。TEDx Kyotoへの参画など、デザインを通じた社会実装を推進している 。
・Balloon Inc. 公式サイト: lloon.jp











