「タクシー会社」から「モビリティテック企業」へ

既存事業の新規事業化を支えるブランド開発の全記録
Mobility Next ブランド開発プロセス

既存事業の新規事業化を支えるブランド開発の全記録Mobility Next ブランド開発プロセス

ブランド開発とは、「何者になるか」を決める仕事

「タクシー会社が、新しい事業を始めたい」
そう聞いたとき、どのようなデザイン支援が可能でしょうか?私たちBalloon Inc.が最初に問いかけたのは、こうでした。
「あなたは、何者になりたいですか?」

既存のタクシー事業から、自動運転タクシーやドローンの活用といった未来のモビリティサービスへ。この転換は、単なる「新規事業」ではありません。会社のアイデンティティそのものを再定義する挑戦でした。

Mobility Next Inc.(株式会社モビリティネクスト)のブランド開発プロジェクトは、そうした「変革」を支えるプロジェクトとして始まりました。

このプロジェクトで私たちが直面したのは、単に「見た目を整える」ことではなく、「企業の未来を言葉にし、形にする」という、より本質的な課題でした。

課題
「何を」伝えるかが、まだ言語化されていない

多くの企業がブランド開発を依頼するとき、すでに「伝えたいこと」が明確になっているケースは、それほど多くありません。
Mobility Nextのケースでも、プロジェクトスタート時点では

✔️ 既存のタクシー事業の強みや歴史
✔️ 未来のモビリティに対するビジョン
✔️ 創業者の思い

これらは「存在」していましたが、それらがどう繋がり、どんな物語を形成するのかは、はっきりとした輪郭があったわけではではありませんでした。

「タクシー会社」という既存の枠組みから脱却し、「モビリティテック企業」として認識されるためには、まず「自分たちが何者か」を定義する必要がありました。

アプローチ:
ロードマップから始める、段階的なブランド構築

私たちは、プロジェクトの最初にブランド開発のロードマップを策定しました。

ロードマップの全体像

Mobility Next ブランド開発ロードマップ 全体プロセス

このロードマップには、プロジェクトの全体像を想定し、ステップごとに書き出したもので、以下の5つのフェーズが含まれています。

1. リサーチ・分析(現状把握と市場調査)
2. コンセプト策定(言葉にする)
3. デザイン開発(形にする)
4. アプリケーション展開(実装する)
5. 運用・改善(育てる)


私たちは「1. リサーチ・分析」「2. コンセプト策定」に最も時間をかけ、ご提案します。ここで定義されたコンセプトが、その後のすべてのデザイン判断の「軸」になるからです。

プロセス1:
コンセプトワードマップで「世界観」を可視化する

多角的リサーチから始める
ブランド構築の最も重要なパートはコンセプト策定です。私たちは以下の視点からリサーチを行いました。

✔️ 既存事業の分析:タクシー事業の強み、顧客との関係性
✔️ 技術トレンド:自動運転、MaaS、ドローン配送などの動向
✔️ 競合分析:他のモビリティサービスのポジショニング
✔️ 創業者の思い:なぜこの事業を始めるのか


コンセプトワードマップの作成
そうした多面的なリサーチから得られた情報を、一枚のコンセプトワードマップにまとめました。

Mobility Next コンセプトワードマップ リサーチ分析

これは、モビリティの未来に関連するキーワードや連想される概念を書き出し、それらの相互関係を可視化したものです。

例えば:
移動」と「体験」
「技術」と「人」
「効率」と「快適さ」

こうした対立概念や相補的な関係を整理し、類型化することで、Mobility Nextが目指すべき位置を明確にしていく作業を行なっています。

このコンセプトワードマップは、クライアントとのディスカッションにおいて「共通言語」としても機能しました。抽象的な議論を具体的なワードに落とし込むことで、チーム全体の認識を揃えることができたのです。

プロセス2:
シンボルマークに「人の手の跡」を残す

最終的に決定したデザインは、社名の頭文字「M」をベースにしたシンボルマークです。

Mobility Next シンボルマーク ロゴデザイン

デザインの特徴

1. 30°の傾斜
シンボルを30°斜めに傾けることで、勢いのある造形としました。これが「先進性」「スピード感」「移動」を連想させます。

2. 手描きのストローク
人の手の跡を残すように、シンボルのストロークが折り返される部分を若干太く、墨だまりのような表現を加えました。「完璧に整った幾何学的なロゴ」のデザインに、私たちは「人の温もり」を加えることを選びました。それは、Mobility Nextが提供するのは「技術」ではなく、「人々の豊かな暮らしへの貢献」だと捉えたからです。

3. 太さに変化を持たせた造形
太さに変化を持たせることで、奥行きのある造形としています。これにより、平面的なロゴに立体感を加えることをねらっています。

プロセス3:
タイポグラフィの設計 — 「走る車」を前提にした可読性

ロゴタイプもオリジナルで描き起こし、デザインしています。

Mobility Next ロゴタイプ タイポグラフィデザイン

可読性を最優先にした理由
今回のロゴタイプは、走行する車に表示されることを前提としています。つまり、以下のような厳しい条件下でも読めなければなりません。

✔️ 高速で移動する車体
✔️ 遠くから見た場合
✔️ 夜間や雨天時


それぞれの状況を想定した上で、私たちは
✔️ 均一な太さのストローク(視認性の向上)
✔️ 力強く、信頼感のある形(安心感の醸成)
✔️ シンプルな構造(記憶に残りやすい)


デザインの美しさと機能性を両立させるため、何度も微調整を重ねてブラッシュアップしています。

プロセス4:
ブランドカラー — 「紫→青→緑」のグラデーション

Mobility Next ブランドカラー グラデーション配色

グラデーションの設計意図

ブランドカラーには、明るいブルー系のグラデーションを採用しています。
色相の変化:紫 → 青 → 緑
色味を変化させることで、「未来への移行」「変化」を表現しました。

明度の調整:右に向かうほど明るく
右側(進行方向)に向かって明るくなることで、「前進」「希望」を暗示しています。

街中での視認性
明るく鮮やかなカラーパレットは、街中でも目を惹き、Mobility Nextの存在を際立たせます。

プロセス5:
シンボルとロゴタイプの統合バリエーション

シンボルマークをロゴタイプに統合するバリエーションも展開しました。

Mobility Next シンボルロゴ統合バリエーション

なぜバリエーションが必要か?
実際の運用では、以下のような制約が発生します。

✔️ 掲載できる面積が限られている
✔️ 画角が狭い、小さい
✔️ 縦長・横長など、スペースの形状が多様


こうした様々な場面でも一貫したブランドイメージを保つため、複数のバリエーションを用意し、対応できるように準備しています。

レターフォーム(字形)としての強み
造語としての覚えやすさや読みやすさを考慮し、シンボルデザインは社名の頭文字「M」を強調したシンプルなものにしました。

これは「ブランド・アイデンティティ・デザインのためのロゴマーク5分類」における3. Letterforms(レターフォーム・字形)に該当します。シンプルで力強いアイデンティティを表現する、最適な選択だと考えます。

デザインアウトプット:
街を走る車へのアプリケーション展開

ブランドのシンボルマーク・ロゴタイプが決定した後、実際の運用へと展開していきました。

車体デザイン

Mobility Next 車体デザイン アプリケーション展開

車体のサイド面に掲出する場合、左右の片側はロゴタイプを読む方向と車の進行方向が逆になります。

そのため、ロゴタイプよりもシンボルマークをより強調した組み合わせを採用しました。
これにより、どの角度から見ても、Mobility Nextのブランドが認識されるようになっています。

サイン・行灯(防犯灯)

Mobility Next サイン 行灯デザイン

タクシーの屋根に取り付ける行灯にも、統一されたブランドデザインを適用しました。
夜間でも視認性が高く、街の中でMobility Nextの存在を際立たせます。

名刺・封筒

Mobility Next ステーショナリー 名刺封筒デザイン

会社用の名刺や封筒にも、統合したブランドアイデンティティを表現しました。

これにより、対外的なコミュニケーションのすべてが一貫性を保ち、「モビリティテック企業」としての印象を強化しています。

このプロジェクトから得られた知見

既存事業の新規事業化には、「言語化」が不可欠

Mobility Nextのプロジェクトを通じて、私たちが改めて確信したのは、「デザインの前に、言葉がある」ということです。

特に、既存事業から新規事業を立ち上げる場合、以下のような課題が発生します。

✔️ 既存事業のアイデンティティを残すべきか、断ち切るべきか
✔️ 新規事業の「らしさ」をどう定義するか
✔️ 社内外に、どう発信・説明するか

これらの課題は、デザインだけでは解決できません。まず言葉で定義し、その上でデザインに落とし込む必要があります。

ブランド開発は、「経営戦略」そのもの
Mobility Nextのブランド開発は、単なる「ロゴ制作」ではなく、企業の未来を定義する経営戦略でした。

✔️ どの市場を狙うのか
✔️ どんな顧客に選ばれたいのか
✔️ 競合とどう差別化するのか

これらの問いに答えることが、ブランド開発の本質です。

デザインは、「育てる」もの
ブランドは、完成した瞬間に終わりではありません。実際に運用され、顧客と接点を持ち、時間をかけて「育っていく」ものです。

そのため、私たちは運用フェーズでの柔軟性も考慮し、バリエーション展開やガイドライン整備を行いました。こうした課題は、DX推進や第二創業、事業承継のタイミングでも同様に発生します。

Balloon Inc. だからできること

ワンストップだから実現できる、統合的なブランド開発

Balloon Inc.は、リサーチ・コンセプト策定・デザイン開発・実装まで、すべてを社内で完結できる体制を持っています。これにより、以下のような利点が生まれます。

✔️ 一貫性の担保(コンセプトがデザインまで一本の線で繋がる)
✔️ スピード(外部との調整が不要で、意思決定が早い)
✔️ 柔軟性(プロジェクトの進行に応じて、臨機応変に対応できる)


Mobility Nextのプロジェクトでも、この体制が大きな強みとなりました。

国内外デザインアワード受賞の品質基準
Mobility Nextのブランド開発は、GRAPHIS Design Annual 2026 でSilver Awardを受賞しました。私たちが目指すのは、国内外のデザインアワードで評価されるグローバル基準の品質です。

単に「見た目が良い」だけでなく、戦略的に正しく、機能的に優れたデザインを提供します。

このプロジェクトのデザインについては以下のデザイン実績にもまとめています。


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