チャールズⅢ戴冠式ブランド事例 ジョナサン・アイヴ「LoveFrom」
元Appleのジョナサン・アイヴが手がけたイギリスチャールズ3世国王の戴冠式のエンブレムガイドラインを取り上げる。
デザインは、5. Emblems(エンブレム)に分類できるだろう。現在でもエンブレム・紋章の使用について厳格に定めているイギリスの国家(ヨーロッパでも数少ない、紋章及び系譜を管理・統括する紋章院が存在する)を象徴するような、伝統的な形式を思わせるモチーフだ。
ロゴマークデザインの分類について「ブランド・アイデンティティ・デザインのためのロゴマーク5分類」へもまとめています。
現代的なエンブレムデザインの再定義
ミニマルなデザインから一転し、具象的なモチーフの多いエンブレムのデザインは(良くも悪くも)目を惹くものに。
自身のスタジオ名を冠したオリジナルのセリフ書体「LoveFrom」で文字が組まれている。
規定カラーのレッドとブルーは、イギリスの国旗のカラーとの調和をねらったものと思われる。
若干明度を落とし落ち着いた雰囲気に調整が施されている。一方「赤」と「青」という色相のギャップの大きく、一見したイメージの煩雑さは否めない。
具体的なアプリケーション展開においては、上の旗ようにイギリス国旗との共存イメージが参考になる。
特にレッドの彩度を落としているからか、国旗に対して控えめな存在感となっており、適切な階層を意図したデザインと捉えられる。
補助的なカラー展開として上記のようなパレットも定義されている。
「レッド」「ブルー」のみの色相の組みあわせで、主に明度差によって内部のエレメントと王冠、文字との差異を設けている。このデザインを見ると、どのエレメントが主要モチーフであるかを改めて確認できる。
サイズに応じた詳細なディテール調整
要素が多く描き込まれている分、小さいサイズでの使用時のバリエーションが用意されている。
葉脈やハイライトの描き込みが削ぎ落とされ、書体のウェイトも一段太くなっている。
ディテールの変更を拡大するとこのようなかたちになる。
周囲の文字組については、ベースラインやレタースペースなども有る程度の変化幅で、大きく調整しているように見える。
「Ⅲ」や「I」など、垂直のストロークが強調される文字をを円弧状に組む調整は難易度が高いだろう。
例えば「Ⅲ」のそれぞれのストロークは、およそエンブレムの中心に向かっているもののわずかに角度が異なることが見て取れる。
幾何学的に整理することには(一般的に)意味は無いものの、細かいディテール調整によって均一におなじ角度に見せている点は大変参考になる。