ブランド定義の類型化と4象限マップによる視覚化

ブランド定義の類型化と4象限マップによる視覚化

2025年12月18日、関西電子情報産業協同組合(KEIS)にて、「ブランドのデザインについて」というテーマで講演を行いました。

「ブランド」という言葉は、人によって捉え方が驚くほど異なります。ある人は「ロゴや名前」だと言い、ある人は「顧客の体験」だと言い、またある人は「企業の信頼」だと言います。定義が曖昧なままでは、戦略を立てることも、社内で共通認識を持つことも困難です。

本講演では世界中に溢れるブランドの定義を整理・分類し、4つの領域で視覚化した「ブランド定義マップ」を中心に、戦略的なブランド構築の第一歩について解説しました。

1. ブランド定義の4象限マップ

ブランドという実体のない概念を捉えるために、Balloon Inc.では多種多様な定義を以下の2軸・4領域で整理しました。

水平軸:企業(送り手) ↔ 生活者(受け手)
ブランドが「誰の持ち物か」という軸です。企業が自ら定義するアイデンティティと、生活者が心の中に描くイメージの対比を示します。

垂直軸:表現(可視) ↔ 構造(不可視)
ブランドが「どのような状態か」という軸です。目に見える造形や記号としての側面と、その背後にある論理や価値観といった目に見えない側面の対比を示します。

ブランド定義の4象限マップ: 垂直軸を「表現・構造」、水平軸を「企業・生活者」として、ブランドの概念を4つの領域に分類した戦略マップ

2. 4つの領域から見るブランド

① 企業 × 構造(ブランドの核)
企業の意志、ミッション、ビジョン、独自の技術力など、ブランドの源泉となる領域です。何のために存在するのかという「Design(設計)」の根幹にあたります。

② 企業 × 表現(アイデンティティの視覚化)
企業の意志を、ロゴ、カラー、タイポグラフィ、製品の造形などに翻訳する領域です。一貫したビジュアル言語によって、企業の「らしさ」を定義します。

③ 生活者 × 表現(ブランドイメージの形成)
広告、Webサイト、パッケージなどを通じて生活者が受け取る「印象」の領域です。企業側の「表現」が、生活者の「知覚」へと変換される接点です。

④ 生活者 × 構造(ブランド価値の蓄積)
体験を通じて生活者の中に蓄積される「信頼」や「関係性」の領域です。一時的なイメージを超えて、企業の資産(ブランドエクイティ)として定着した状態を指します。

3. 「どこを目指すか」という合意形成のツールとして

この4象限マップの真の価値は、学術的な分類にあるのではなく、「自社のブランドが今どこにあり、将来どこへ向かうべきか」を議論するための共通言語になることにあります。

ブランディングとは、左側(企業)にある「構造」と「表現」を、いかにズレをなくして右側(生活者)の「認識」へと繋げるか、という高度な翻訳作業と言えるからです。

「うちは技術力(機能)は高いが、情緒的な繋がりが弱い」「製品の認知はあるが、組織としてのアイデンティティが語られていない」といった課題が、図解によって一目で明らかになります。この客観的な現状把握こそが、迷いのないデザイン決定と一貫したメッセージ発信を可能にします。

ブランド定義の類型化と4象限マップによる視覚化:ブランドのタッチポイントについて

おわりに:構造化が「伝える力」を最大化する

ブランドを単なる「感性」の世界に閉じ込めず、論理的に構造化すること。それが、デザインを強力な経営資源として活用するために重要な視点だと考えます。

定義が変われば、戦略が変わります。戦略が変われば、アウトプットされる「かたち」も変わるはずです。自社のブランドの目指すべき方向性を考えるきっかけになれば嬉しいです。

その他、この4象限の類型化を用いながら、優れたデザインアセットを企業の「経営資産(ブランドエクイティ)」として蓄積・活用していくための戦略的な視点をご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
▶︎ 資産としてのブランドを設計する:ブランド定義の類型化とエクイティ構築の構造


執筆者プロフィール:志水 良(Shimizu Ryo)

Balloon Inc. CEO / アートディレクター
OUZAK Design、キーエンスでのデザイン経験を経て、現在はブランディング、UI/UX、工業デザイン、グラフィックデザインまで幅広くカバー。JAGDA・JIDA正会員、German Design Award、A’ Design Award、Graphis Brandingなどを受賞。TEDx Kyotoへの参画など、デザインを通じた社会実装を推進している 。
・Balloon Inc. 公式サイト: lloon.jp