Minute Maidのブランドロゴ刷新事例 「シンボルの引き算」と「イラストの足し算」
世界最大のジュースブランド Minute Maid(ミニッツ・メイド)が、包括的なグローバルアイデンティティを発表。
77年の歴史を持つブランドが今回のリブランディングを機に、初めてグローバルで統一したビジュアルを展開する大幅な刷新となった。
これまでの本ブランドは、国ごとに異なるビジュアルを持ったローカライズ展開がなされてきた。
例えば米国の Minute Maid、ヨーロッパとアフリカの Cappy、ラテンアメリカの del Valle などが知られるが、今回のリブランディングによって基本的なデザインベースが統一されている。
このブランド刷新は Jones Knowles Ritchie、 Grey、 VMLY&R、 Landor&Fitch の4社協働によるもの。
デザインは注がれた飲料を思わせる抽象的なデザインに、ワードマークを統合させたもので、4.Wordmarks(ワードマーク・文字)をベースに、1.Abstract(抽象的図形)を組み合わせたものと捉えられる。
ロゴマークデザインの分類について「ブランド・アイデンティティ・デザインのためのロゴマーク5分類」へもまとめています。
質感を省き、動きを加えるデザイン
これまで特徴的だったグリーンのグラデーションが消え、シンボル・ロゴはフラットデザインが採用された。
グラデーションが持っていた動きを思わせる要素は、曲率の異なる2つの円弧と交換され、交点を中心からずらすことで楽しげな雰囲気を演出している。この造形はジュースがコップに注がれる様子を思わせ、独特なアイデンティティを構成するに至っている。
2023年は、Fanta や 7Up など複数の飲料ブランドがフラットな2Dアプローチを採用している点も特徴的だ。
全体のプロポーションは、より正方形に近付いた。また、上部左右の円弧(ほぼ)単心曲線であるが、中心点のや交点の設計の拠り所は見出すことは出来なかった。
読みやすく展開しやすくなったワードマーク
刷新されたロゴタイプはこれまでの Minute Maid のブランディングで見られた粗いセリフ(時にカットアウトされたハイライトもある)に取って代わり、ソフトなターミナル(ストロークの先端)を備えた、より柔らかで温かみのあるデザインに置き換えられている。
ロゴタイプデザインの詳細を見ていく。新旧ロゴタイプの比較が以下(マゼンダが新しいデザイン)である。
設計の最も顕著な意図は、「xハイト」の伸長だろう。この処理によって明らかに可読性の向上がみられる。これまでキャップハイトの62%程度だったxハイトが、76%へと大幅に修正されている。
加えて文字幅を狭くすることで(特に「e」や「d」で著しい)、ワードマークの全体の幅が狭まり、小さいサイズでの展開において大きな利点がある。
イラストレーションへ移転したテクスチャー表現
ブランドのビジュアルイメージは、楽しくカラフルで大胆なイラストも特徴的だ。
シンボルで省いたテクスチャー表現を、イラストレーションにおいてはふんだんに用いた対比も素晴らしい。
イラストとシルエット写真とを巧く組み合わせ、実物の輪郭・影とイラストレーション表現を補完的に扱うことで相乗効果をもたすことに成功している。
ロゴタイプに合わせて、丸みを帯びたセリフ書体が開発され、それぞれのマーケットのパッケージに一貫性を持たせている。
円弧状に配置されたタイポグラフィは、魅力的で遊び心のある世界観を構築する上で重要な役割を果たしている。
シンボルが効果的に機能したパッケージデザイン
新しいパッケージは非常にいい印象。
特徴的なシンボル上部の形状が、様々なカラーバリエーションにおいても強くアイデンティティを表現している。カラフルなフルーツの写真と背景に施されたテクスチャーが、一貫したブランドビジュアル展開を明確に示唆しており美しい。
シンボルのデザインは、厳密なものでは無い点は特筆すべきだろう。下側がパッケージ底まで伸びているにも関わらずオリジナリティを維持できているのは、シンボル上部にある新しい大きな曲線がこのデザインの最も重要な識別要素であることに他ならない。
その他パッケージ形状が四角である点も重要なポイントだ。シンボルの曲線の力強さをより強調している。
Minute Madeの世界観を表す展開
広告や店頭ディスプレイへの展開も、統一されて世界観が巧く表現されている。
楽しげな印象を持ちながら、高品位なデザインが少し大人びた雰囲気を与えた。
おわりに
77年の歴史で初めてのグローバル統一をめざしたブランディングということで、非常に難易度の高い複雑なプロジェクトであることは想像に難くありません。
その中でも、「引き算のシンボル」と「足し算のイラスト」という明確なデザイン意図を一貫して表現し続けた結果、目を見張るようなデザインとなったと思います。
*記事内で使用した「Minute Maid」のシンボルマーク・ロゴタイプおよび関連画像は、全て “Minute Maid” に帰属します。
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