アーミン・ホフマンのデザイン教育

画像生成AIは人間の感性に近いアウトプットができるのか? —Midjourney・Adobe Firefly・Stable Diffusion比較—

スイス・バーゼル派のグラフィックデザイナー/タイポグラファーであるアーミン・ホフマンによる『削ぎ落とすこと. 倫理. 教育.』の邦訳版が2023年末に発売されました。

画像生成AIは人間の感性に近いアウトプットができるのか? —Midjourney・Adobe Firefly・Stable Diffusion比較—

過去の偉大なデザイナーたちは、自身の創作だけでなく教育にも大きな貢献をしていることは知られているものの、タイトルに直截的に「教育」と題されたものはあまり例がありません。今回は「教育」をテーマにこの本を取り上げてみようと思います。

本書はホフマンの生誕百年記念出版の邦訳とのことで、ホフマンによるデザインという職業に対する倫理的信念、グラフィックデザインを専攻している学生に向けた教育の原則について包括的に概観しています。

1947年から40年にわたってスイスの『バーゼル・スクール・オブ・デザイン』で教鞭をとり、国際タイポグラフィー様式(スイス・スタイルとも呼ばれる)の発展に重要な役割を果たしたホフマンは、学術的な演習と実践的な結果との間の境界を解消することを一貫して目指していました。

学んだことを実践的な作業に応用することが大切です。

『削ぎ落とすこと. 倫理. 教育. 』アーミン・ホフマン 2023 p97

とあるように、ホフマンにとって考えることと実行することは不可分の関係にありました。知性と直感的な感覚世界の相互作用こそ、創造的な高等教育の本質であると捉えていたのです。

表層的なスタイルの模倣では無い、一過性のトレンドに左右されない真の「創造性」を育むホフマンの授業とはどのようなものだったのでしょうか。

意味論的使用法と応用の探求

画像生成AIは人間の感性に近いアウトプットができるのか? —Midjourney・Adobe Firefly・Stable Diffusion比較—

そのひとつが、写真を組み合わせ視覚情報を記号として扱うものです。

上図は写真の意味論的使用法と応用を探求したホフマンのプロジェクト(一部)で、写真を使用したセミオティックの実験として知られています。

ハンマーの写真を真ん中にはさんだ両側2つのイメージ写真は、全く異なる意味を持つ画像です。しかし、ハンマーの写真がその2つに共通した特徴を強調したり、(間接的に)関係する媒体として機能することで、その組み合わせに明確な意味がもたらされます。

ここでは、奏でるハンマー、道具としてのハンマー、力の象徴としてのハンマーなど、組み合わせられた写真同士の関係性が立ち上がり、意味が生まれます。

その他にも、建造物に用いられるマークを調査し、分類するといったものもあります。

画像生成AIは人間の感性に近いアウトプットができるのか? —Midjourney・Adobe Firefly・Stable Diffusion比較—

こちらはバーゼル大聖堂に刻まれた石工のサイン(記号)の調査とその記録。それぞれの記号は石を切断した石工のサインを表しており、多くの石工は特定の種類の石だけを専門に切断していました。

1356年の地震で大聖堂の一部が破壊され、残った部分と再建された部分それぞれには、(時代が異なるため)ゴシック様式とロマネスク様式のサインが刻まれています。

ロマネスクとゴシックの石工のサインの構造的な対照は、建築様式の細部を比較する際に見られる相違を反映していることが分かります。

ホフマンによる主張、中でもデザイン教育に対する問題提起は、現代の日本にもそのまま当てはまる普遍的なものだと思います。

短期的、直接的な結果を求めがちになる中で、創造性を育むための実直な教育の重要性を改めて感じました。

アーミン・ホフマンのデザインと教育に対する誠実な姿勢を、改めて心に刻み込むことができる素晴らしい本でした。

哲学的な思考は、地に足のついた実戦と同等でなければなりません。突飛な思考や型破りな実践であっても、職業の活性化に繋がる深遠な洞察を生み出すことが出来ます。

削ぎ落とすこと. 倫理. 教育. 』アーミン・ホフマン 2023 p97

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