ブランドの役割とデザイン開発 —ブランディングの3ステップ—

ブランドの役割とデザイン開発について

ブランド(brand)という言葉は、もともと中世〜近代にかけて使われていた「燃える」「炉の木の燃えさし」という意味が語源のようです。16世紀以降に「焼き印をつける」ことに転じ、19世紀になって「商標」の意味として使われるようになりました。

その後、ブランドは(時に)「何かと何かを区別する」概念として用いられることになります。この区別するという意味合いは、ブランドが持つ識別機能と同様のものと言えますね。そしてブランドは、自身が持つ価値を多くの人に想起してもらう役割を担う様になりました。

この記事では、ブランドとは何か?ブランドがなぜ重要なのか?といった点について具体的なプロセスなどと共にまとめました。

ブランドがなぜ重要なのか?

ブランドの役割とデザイン開発について:ペプシパラドックス

ペプシパラドックスという言葉を聞いたことがありますか?

これはペプシコーラとコカ・コーラのどちらが美味しいかを調べた消費者テストで、ブランドを明かさない条件と明かす条件で結果が正反対となった非常に興味深い実験です。ブランド名を明示するとコカ・コーラが好まれ、明示しないときはペプシが好まれるという結果が出ました。

この実験で分かるのは、強固なブランドは場合によっては人の好みまで変えてしまうほど強い影響力を持つということでしょう。ブランドが重要なのは、人の心に強く印象づけたり、信頼を生み出したりすることができ、また競合との差別化を促すことが出来るからです。企業活動の中で長期的な収益の基盤構築に不可欠な要素と言えるでしょう。

ブランドデザインの要素・構造と種類

ブランドを構成する要素には「シンボルマーク」「ロゴタイプ」「ロゴマーク」などがあります。これらのデザイン要素について見ていきましょう。

シンボルマークとは、企業やブランド、製品やサービスを体現する、もしくは顧客にもたらす利益をひとつの具体的なイメージに要約し、図案化したものが使われます。ビジュアルによるコミュニケーションに依拠しているため言語による障壁が低く、多くは世界共通で用いられやすいという点も特徴です。

ロゴタイプとは、会社名やブランド名を独自のテキストとしてデザインしたものを指します。
ロゴマークは、上記のロゴ(タイプ)と(シンボル)マークを組み合わせたものの総称として呼ばれます。

ブランドアイデンティティ構成要素:シンボルマーク・ロゴタイプ・ロゴマークとは

シンボルとロゴタイプの組み合わせだけではなく、ブランドによってはロゴタイプのみで構成されるものやシンボルマークのみを展開するといった様々なバリエーションが存在します。それらは大きく5つのカテゴリーに分類され、独自の特徴を持っています。詳しくは以下の記事をご覧下さい。

強いブランドとはどういったものか

シンボルマークやロゴタイプをデザインした後はそれらを様々な場面で展開し、ブランドを構築していくことが肝要です。名刺や封筒、ウェブサイトや看板、サイン、スタッフの制服など、ありとあらゆるものに展開していくことになると思います。これらはなぜ実施していく必要があるのでしょうか?

ブランドアイデンティティ構成要素:ブランドイメージの構築について

ブランドが目指すのは、一人でも多くの人に「ブランドイメージ」を強く明確に持ってもらうことです。そのために多様なアイテムにブランドを展開します。上の図で見ていただきたいのは、ブランド側がデザインし、管理できるのは左側にあるものだけだ、という点です。人の頭を覗くことはできませんし、こんなイメージを持って欲しいと強要することも不可能です。

人々は、様々な場面でブランドのシンボルやロゴを見て(あるいは感じて)自分の頭の中にブランドのイメージを少しずつ蓄積していきます。接触頻度が高いほどブランドイメージは強固になります。

そのために私たちが出来ることは、可能な限り多くのポイントで、一貫した世界観でもって構築したブランドイメージを展開し続ける事なのです。

ブランドアイデンティティ構成要素:ブランドイメージの構築について

こうした、ブランドと人々と接するポイントを「コンタクトポイント」と言います。

ブランディング施策をし始めたばかりのタイミングでは少なかったコンタクトポイントは、中・長期的な施策を通じて、人々の周りを取り囲み、「点」から「線」へ、やがて「面」となってブランド文化の醸成につながります。

ブランドのデザイン開発基準(クライテリア)

ブランド開発を行う際には、「イメージ・コンセプト」と「機能コンセプト」という両面から検討していきます。イメージ・コンセプトは情緒的・感情的な部分へ訴えかけるものを指します。どういったイメージを人々に持ってもらいたいのか、格調高い – 親しみやすい、クラシック – モダン、など複数の軸によって絞り込んでいきます。機能コンセプトは、識別性や可読性、差別化要素といった機能面に関するものです。

それらを元にデザイン全体の開発基準である「クライテリア」を策定します。

ブランドアイデンティティ構成要素:ブランドイメージの構築について

実際には、基礎的な調査やヒアリングなどを実施しながら、ブランド全体の戦略策定とともに進めていくケースが多くなります。前後に行うプロセスと関係性は上記の例のようなものになります。

ブランド開発のための3ステップ

ブランドを開発する上で最も重要な点は、他のブランドには持ち得ない、独自のコンセプトを発掘することです。すでに持っているものの中から見つけることも出来るかも知れませんし、リサーチやヒアリングの中から浮かび上がってくる場合もあります。

そのため、以下のような3段階のステップによってその価値の言語化、共有を行いつつ、実際のデザイン開発を進めます。こうしたブランドの価値を体現する全体のプロセス設計は欠かせません。

1.目指す方向を考える
2.ブランドの「らしさ」をつくる
3.ブランドの「表現」をつくる

ブランドアイデンティティ構成要素:ブランドイメージの構築について

ブランドとはあくまでその組織活動の表出であり、あらゆるブランドデザインはそこを起点に始まるべきだと考えます。私たちは、このような観点から本質的な価値を捉えた上でブランドイメージを構築し、ブランド価値の向上をねらった戦略・実施に取り組んでいます。

*記事内の全てのシンボルマーク、ロゴタイプおよび関連する画像は、全てそれぞれの会社、組織に帰属します。

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