Facebookにみるリブランディング事例
2023年はソーシャルメディアにとって重要な変化が続々と起きた年でした。イーロン・マスク氏によるTwitter買収、その競合であるThreadsの登場や、Twitterの”X”へのリブランディングなど…。そしてここに来てFacebookは新しいリブランディングを発表しました。
今回のFacebookのリブランディングは、これまでのブランドアイデンティティを構成する要素を踏襲し、ディティールのブラッシュアップを積み重ねながらリフレッシュした印象を与えるものでした。
Facebookのブランドは、円形にサービス名の頭文字である「f」を配置したシンボルマークと、Facebookのロゴタイプによって構成されます。シンボルのデザインは、3. Letterforms(レターフォーム・字形)に分類されます。
一方のFacebookロゴタイプは、4. Wordmarks(ワードマーク・文字)のデザインとなりそうです。ワードマークタイプのデザインは、ロゴタイプと全く異なるフォントが用いられることも多いですが、Facebookの場合は、基本的に同じフォントで統一しているようです。
ロゴマークデザインの分類について「ブランド・アイデンティティ・デザインのためのロゴマーク5分類」へもまとめています。
Facebookブランドの変遷
スタートアップにしては珍しく、ブランドの構成する重要なシンボルのデザインは当初から一貫しています。ブランドカラーであるブルーの図形に、白い文字で「f」を描くというシンプルなデザインルールは、ブランド認知に大きく寄与したものと思われます。
今回のリブランディングによって、背後の円に施されていたグラデーションは消え去り、より明るく彩度の高いブルー一色によってカラーリングされました。
上のブランドアセットをまとめたデザインからも、より親しみやすく楽しげな印象を獲得したことが伝わります。
傾きが強調されたタイポグラフィのデザイン
ブランドカラー以外にも、タイポグラフィに手が加えられたのは特筆すべきです。ラインとラインの間の空白部分、ふところを広く空けより可読性に配慮されました。
またストロークの先端が、より鋭角になり「10°」の角度が設けられています。特にシンボルデザインの「f」の2画目終端にエッジをもたらす意味は大きそうです。より活動的なエキサイティングな印象に寄与しました。
また、そうしたディティールの調整を施した独自書体「Facebook Sans」の開発もされ、UI(ユーザーインターフェース)全体の統合的なブランディングを推し進めています。
見出しの文字組はレタースペース(文字間)を広めにとり、幼げな印象も受けました。
興味深いのは、そうした書体の開発において、ベンチマークとしたと思われる書体との比較が用いられている点でしょう。
「Roboto」「SF Pro」といった若干幾何学的なアプローチをとる書体設計を参照しながら「Facebook Sans」というサンセリフ体を開発したようです。
ブランドにおける「感情」の表現
リアクション用のアイコンはの変化も見逃せません。
1)カラー変更に伴い、より彩度明度の高い色に変更される
2)喜怒哀楽の感情の表現が、より強調される
主には上記のような点ですが、笑顔の口の大きさがより広くなるなど表情がかなり豊かになっています。
SNSにおけるポストへのリアクションは、本来非常に複雑な個別的な価値判断の表出と言えるものです。類型化され、限られた選択肢のみから選ばせる、というUIがそもそも理にかなっているのかという点はありつつも、ソーシャルなネットワークにおける自身の表現をより豊かな方向へ修正したのは興味深いですね。
アイコン、絵文字などについても全面的に見直されました。ストロークの先端が丸みを帯びているため、全体的に柔らかな印象が目にとまります。こちらも少しレトロ、というか幼い雰囲気が醸し出されていますね。
アプリのアップデートを行ったあと、スマートフォンのアイコンの色が変わったことに気づいた方もいるかもしれません。今回のFacebookのリブランディングのデザインは、これまでの主要なブランド資産を活用しつつ、若年層へのターゲティングを反映した事例と言えそうです。
これらが実装されるのは今後数ヶ月をかけて、とのことですが、こうしたブランド全体を統合的に改善していくアプローチが、実際のユーザー行動にどのような影響を与えるのか、注視していきたいと思います。
Meta社のデザインについては以下の記事でも取り上げています。
*記事内で使用した「Facebook」のシンボルマーク・ロゴタイプのデザインおよび関連画像は、全て “Meta” より引用しています。
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